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佐々木朗希、MLB2年目の現在地:3つの指標で見る投球の変化

佐々木朗希がMLBで迎えた2年目のシーズン。ケガにより8先発にとどまった2025年を経て、2026年は6月19日時点ですでに13先発を重ねている。現時点での暫定値ではあるものの、投球データを並べると、昨季とははっきりと異なる傾向が表れている。

ボールを離す位置、球種の構成、そしてそれぞれの球の動きという3つの要素が同時に変わっているのだ。本稿は、空振り率や防御率といった結果の数字を扱い、「その変化が成功しているか」を評価するものではない。純粋な計測データから、佐々木が現在どのような球を、どこから投げているのかという事実の指摘にとどめる。現状整理として読まれたい。

持ち球の再編

まず、何を投げているかを見てみよう。持ち球の構成が3球種から4球種へと変わっている。2025年はフォーシーム(49.9%)、フォーク(33.5%)、スイーパー(16.3%)という割合だったが、2026年はフォーシーム(43.4%)、スプリット(23.3%)、スライダー(21.4%)、フォーク(11.9%)となった。

球種構成の変化:3球種から4球種へ

投球割合(%)、2025 vs 2026

20252026

2025年:スプリットなし、スライダー系=スイーパー / 2026年:スイーパーなし、スプリット・スライダー新登場

球種名はStatcastの自動分類に基づく。2025年スイーパーと2026年スライダーは同列での比較には注意(形状の差は本文参照)

レギュラーシーズンのみ・独自集計 (Statcast, game_type='R')

2026年は6月19日終了時点・13先発の途中経過

昨季投げていたスイーパーがなくなり、新たにスプリットとスライダーが加わった。フォークの割合は半分以下になったが、投げるのをやめたわけではない。フォーシームの割合もわずかに減っている。

ただし、この球種名がトラッキングシステムによる自動分類に基づいている点には留意が必要だ。単に球種名が変わったのではなく、実際の球の動きが変わったために別の球種として分類されているのである。

新たな軌道と球質の変化

その「球の動き」にも明確な違いがある。

球の動きの変化:横変化 × 縦変化(cm)

各球種の平均変化量。縦変化量はGravity補正済み、正の値=上方向(ライド)

2025(菱形)2026(●)

球種名はStatcastの自動分類に基づく。2025年スイーパーと2026年スライダーは同列での比較には注意(形状の差は本文参照)

レギュラーシーズンのみ・独自集計 (Statcast, game_type='R')

2026年は6月19日終了時点・13先発の途中経過

軸となるフォーシームは、球速が上がり、縦変化量も増している。平均球速は約154.7 km/h(96.1マイル)から約156.8 km/h(97.4マイル)へ、約2.1 km/h(1.3マイル)上がった。重力の影響を除いた縦変化量は約36.4 cmから約40.4 cmへと増し、よりホップする軌道になっている。回転数も2,085 rpmから2,221 rpmへ増えているが、これは結果の良し悪しを示すものではなく、あくまでボールの物理的な状態を表すデータである。

球速の変化:2025 vs 2026(km/h)

各球種の平均球速。mph × 1.60934 で変換。

20252026

球種名はStatcastの自動分類に基づく。2025年スイーパーと2026年スライダーは同列での比較には注意(形状の差は本文参照)

レギュラーシーズンのみ・独自集計 (Statcast, game_type='R')

2026年は6月19日終了時点・13先発の途中経過

変化球の軌道も大きく様変わりした。昨季のスイーパーは平均球速約132.0 km/h(82.0マイル)で、横変化量(スライド成分)が約29.7 cmと大きく横へ曲がる球だった。一方、今季加わったスライダーは平均球速約139.3 km/h(86.6マイル)で、横変化量は約3.5 cmにとどまる。より速く、小さく曲がる球へとシフトしている。

さらに特徴的なのは、2つの落ちる球の使い分けだ。新たに加わったスプリットは平均球速約145.1 km/h(90.2マイル)、横変化量(シュート成分)が約20.2 cmで、縦変化量は約+2.9 cmとほぼ落ちない軌道を描く。これに対し、継続して投げているフォークは平均球速約137.0 km/h(85.1マイル)、横変化量(シュート成分)は約8.2 cmで、縦変化量は約-7.3 cmとしっかり沈む軌道である。なお、2026年の各球種はすべて100球を超えているが、スプリットは1球ごとの回転数のばらつきが大きいため、平均値(941 rpm)という数字だけで『こういう球だ』と決めつけないよう注意が必要だ。

リリースポイントの一塁側への移動

球種構成と軌道が変わる一方で、リリースポイントも明確に一塁側へ移動している。

先発ごとの横リリース位置(cm)

2026年第3先発(4月12日)から一塁側へ約20cm移動し、以降全13先発で安定

20252026

横リリース=release_pos_x (Statcast)。負の値=捕手視点での三塁側。

2026年に三塁側から一塁側へ移動したため、グラフの数値は小さく(絶対値が減り)なっている。

レギュラーシーズンのみ・独自集計 (Statcast, game_type='R')

2026年は6月19日終了時点・13先発の途中経過

2025年はプレート中央から三塁側へ約72 cmの位置でボールを離していたが、2026年は三塁側へ約52 cmの位置になった。つまり、一塁側へ約20 cm移動した計算だ。

2026年の開幕から数試合でこの新しい位置に定着し、以降の全13先発(1,175球)で一貫してこの場所から投げている。なお、縦のリリースポイント(高さ)は約3〜4 cm高くなっているが、エクステンションも約2.15 mから約2.17 mへと、ほぼ変わっていない。

リリースポイントの変化:球種別(cm)

2026年は全球種が一塁側へ約20cm移動。高さも約3〜4cm上昇

2025(菱形)2026(●)

横軸・縦軸はStatcastのrelease_pos_x / release_pos_z(cm)。

エクステンションはrelease_extension(m)。

レギュラーシーズンのみ・独自集計 (Statcast, game_type='R')

2026年は6月19日終了時点・13先発の途中経過

ただし、このデータはあくまで「どこからボールを離しているか」という事実の指摘にとどまる点に注意したい。投球フォームを変えた結果なのか、意図的な移動なのかといった理由はデータからは分からない。2025年のシーズン中にも一塁側への移動傾向は見られていたため、2026年になって明確に異なる位置に定着したと見るべきだろう。

球種別データ一覧

球種割合 2025→2026球速 km/h縦変化 cm横変化 cm横リリース cm
フォーシーム49.9%→43.4%154.7→156.8+36.4→+40.4−26.8→−23.5−73→−53
フォーク33.5%→11.9%136.6→137.0−9.8→−7.3−2.7→−8.2−70→−53
スライダー系※16.3%→21.4%132.0→139.3−5.9→−5.1+29.7→+3.5−73→−54
スプリット(新)23.3%145.1+2.9−20.2−49

※2025年のスライダー系はスイーパー(横変化量+29.7 cm)、2026年はスライダー(+3.5 cm)。球種名の違いは自動分類の問題ではなく、実際の球の動きが異なるためである。横変化量のプラスは一塁側(グラブ側)、マイナスは三塁側(アーム側)。縦変化量のプラスはライド方向(上)。球速はmph × 1.60934で変換。