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ゴロの山を築き、サイ・ヤング賞争いに浮上した左腕。クリストファー・サンチェスの特異なチェンジアップ

ナショナル・リーグのサイ・ヤング賞争いにおいて、日本人投手のライバルとなるのは誰だろうか。イニング数でリーグ2位につけ、純粋な投球内容を示す指標で上位に名を連ねる一人の左腕がいる。フィラデルフィア・フィリーズのクリストファー・サンチェスだ。

2026年7月の時点で、彼はすでに127.3投球回に到達している。守備の影響を除き、三振・四球・本塁打から防御率を推定するFIPは2.71であり、これは同リーグの先発投手(64人)のなかで3位に位置する。この純粋な指標においては、15位(3.36)の山本由伸をも上回っている。では、このサンチェスとはいったい何者なのだろうか。

ドミニカ共和国出身の29歳は、身長198.1cmの長身左腕である。2013年に16歳でドラフト外でプロ入りし、2019年にマイナー選手とのトレードでフィリーズへ移籍した。キャリアの序盤から有望株として脚光を浴びていたわけではなく、2021年と2022年はリリーフ登板が中心であり、防御率は5点台にとどまっていた。

しかし、彼には当時からゴロを打たせるという明確な持ち味があった。そして2023年、対戦打者に対する与四球率を9.6%から4.0%へと半減させ、制球力を劇的に向上させたことで、エース級の先発投手へと成長を遂げたのである。2024年にFIP 3.00、2025年にFIP 2.55と好成績を残し、2032年までの長期間にわたる契約延長を勝ち取っている。

サンチェスの成績推移(FIPと投球回)

FIP投球回 (IP)

彼を語るうえで欠かせないのが、MLB全体で1位となる57.7%のゴロ率である。大谷翔平(52.1%で全体12位)や山本由伸(48.2%で全体25位)といった日本人エースも先発投手の中央値(42.6%)を大きく上回る高いゴロ率を誇る投手であるが、サンチェスはその二人をも上回るMLB最高のゴロ率を記録しているのだ。被打球の平均打ち出し角はわずか2.3度であり、これも全体2番目の低さである。

MLB先発投手 ゴロ率ランキング(2026年)

クリストファー・サンチェスその他の先発投手日本人投手

このようにゴロを量産する投手と聞くと、球速を抑えて打たせて取るスタイルを想像するかもしれない。しかし、サンチェスは違う。シンカーの平均球速は153.2km/h(95.2マイル)を計測し、これは同球種を投げる先発投手のなかで上位3割に入る。投球全体の平均球速145.3km/h(90.3マイル)も、全体の上位およそ3分の1に位置している。平均以上の球速を持ちながら、球の軌道(球質)によって打者にゴロを打たせるのが彼の投球なのだ。

その投球を根底から支えている最大の武器が、全投球の39.0%を占めるチェンジアップである。この球種が持つ特異性について、少し詳しく見てみよう。

一般に、投球の結果には傾向がある。空振りを奪いやすい球種と、ゴロを打たせやすい球種は、別々の役割を担うことが多い。両方の要素を高水準で満たす球種はほとんど存在しないのが実情だ。しかしサンチェスのチェンジアップは、空振り率が42.1%、ゴロ率が64.5%に達し、打球速度と打球角から見込まれる期待加重出塁率(xwOBA)を.197に封じ込めている。

2026年に先発投手が投じた約600の球種(各投手の持ち球)のなかで、「空振り率40%以上」かつ「ゴロ率55%以上」を両立している球種はわずか4つしか存在しない。そのなかでもサンチェスのチェンジアップは最も高いゴロ率を誇る。先発投手のチェンジアップの平均(空振り率29.1%、ゴロ率49.8%)と比較しても、空振り率で13.0ポイント、ゴロ率で14.7ポイントも上回っている。

彼の持ち球を見渡すと、シンカーはゴロ率57.4%・空振り率10.1%とゴロに特化しており、スライダーは空振り率43.2%・ゴロ率39.5%と空振りに特化している。一つの球種でこの両方の役割を同時にこなしているのは、チェンジアップのみである。他の球種では到底及ばない水準にあるこのチェンジアップこそが、彼の成績の原動力だ。

空振りとゴロを両立するチェンジアップ

サンチェスのチェンジアップ

奪三振率から与四球率を引いたK-BB%でも全体6位(22.6%)につけており、サイ・ヤング賞候補として挙がるのは妥当な評価と言える。7月6日の登板では3回1/3を投げて9失点という乱調があったため防御率は2.62(全体8位)となっているが、その後の登板ではきっちり7回を2失点にまとめており、一度のつまずきを引きずらない投球を見せている。

次に彼が日本人エースのライバルとして言及されるとき、その好防御率が単なる幸運によるものではなく、空振りとゴロの両方を生み出す特異なチェンジアップによる結果であることを、ぜひ思い出してみてほしい。