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ミジオロウスキーってどんな選手?

24歳の新人が投げる、MLBで最も空振りを奪うフォーシーム

6月12日、フィリーズ打線は9イニングをかけて、ヒットをただ1本しか打てなかった。それも単打が1本きり。四球はゼロ、得点はゼロ。三振は15を数えた。投げていたのは、ブルワーズの右腕ジェイコブ・ミジオロウスキー。24歳、MLBデビューからまだ1年の新人である。注目したいのはその三振の取り方である。15個の三振のうち12個、22個の空振りのうち20個を、フォーシームで奪っている。

@MLB

大谷翔平をきっかけにMLBを見始めた人にとって、この名前はまだ耳慣れないだろうし、読み方も一度では覚えづらい。だが、この一戦を目にして「誰だ、この投手は」と思ったのなら、少しだけ立ち止まってこの記事を読んでみてほしい。「誰だ」で止めず「なぜこれほど打たれないのか」まで踏み込めば、この投手の正体がはっきりする。

ミジオロウスキーのフォーシームは、いまMLBで最も空振りを奪う球である。ずば抜けた長所が一つあるからではない。速さ・回転・エクステンションという3つの要素が、そろって最上位にあるからだ。この3つがそろって最上位に並ぶ投手は、ほかにいない。その中身を、これから順に見ていこう。

先に断っておくが、これはあくまで新人の途中経過である。2026年シーズンは始まってまだ半年に満たず、登板も14試合にすぎない。あくまで暫定値として読んでください。

空振り率40.2%が意味すること

ミジオロウスキーのフォーシームの空振り率は40.2%である。打者がバットを振ったうち、4割が空を切っている計算になる。この数字は果たして高いのだろうか?リーグ内で比べて見よう。

ここで比べる相手は、2026年にフォーシームを100球以上投げた321人で、先発も救援も含む。この321人のフォーシームの空振り率を並べると、ミジオロウスキーが1位に立つ。リーグの平均は18.3%だから、平均のおよそ2.2倍の頻度で打者の空振りを誘っている。平均的な投手が5回振らせて1回弱しか空を切らせられないところを、この投手はおよそ2回に近づけている。

2位はメイソン・ミラーの38.2%。この2人だけが僅差で抜け出ていて、3位以下とは大きく開いている。なお2位のミラーはクローザーである。

この40.2%が日本のファンにとってどれくらい遠い数字なのか、添えた図で見てみよう。山本由伸・今永昇太・佐々木朗希・千賀滉大といった、毎週のように目にしている日本人先発は、いずれもこの40.2%のはるか下にいる。最も高い山本由伸でも26.0%で、ミジオロウスキーより約14ポイント低い。今永(17.2%)・佐々木(15.3%)・千賀(19.1%)にいたっては、321人の平均18.3%の前後にとどまっている。

フォーシームの空振り率 ― フォーシームを100球以上投げた321人のなかでの順位

ミジオロウスキー有力先発日本人投手全体321人

新人の途中経過(6月12日まで)・独自集計

2026年にフォーシームを100球以上投げた321人(先発・救援)のフォーシームの空振り率。ミジオロウスキーは40.2%で先頭、321人の平均18.3%の約2.2倍。一線級の先発(スキーンズ26.7%・スクーバル16.3%)も、おなじみの日本人投手(山本26.0%・大谷25.0%・今永17.2%・佐々木15.3%)も、これより低い。順位は独自にスタットキャストを基に集計した321人のなかでの位置で、公式のリーダーボードではない。千賀(振り68回)・菊池(振り97回)は標本が小さく振れが大きい。新人の途中経過(6月12日まで)。
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現時点で、このフォーシームがMLBで最も空振りを奪う球であることは、数字のうえではっきりしている。

なぜ空振りが奪えるのか ― 3拍子そろって抜けている

フォーシームの空振りを左右する要素のうち、ミジオロウスキーで飛び抜けているのは3つある。球の速さ、回転数、そしてエクステンションである。速いほど打者の対応は遅れ、回転数は空気のなかでボールの軌道がどう描かれるかに効いてくる。エクステンションとは、投球の際に体が前へ伸びる距離のことで、長いほどボールを離す位置が打者に近づき、同じ球速でも速く感じさせられる。この3つが何を指すかを先に押さえておくと、すぐ下に出す図が何を並べているかが分かる。

速さ・回転・エクステンション ― 3つすべてが3位以内の投手は、たった一人

2026年にフォーシームを100球以上投げた321人(先発・救援)のなかで

ミジオロウスキー有力先発(①〜⑤)全体321人

新人の途中経過(6月12日まで)・独自集計

2026年にフォーシームを100球以上投げた321人(先発・救援)のなかで、速さ・回転・エクステンションの3つすべてが3位以内に入るのはミジオロウスキーだけ。一線級の投手も、どこか一つの軸では右上の角から外れる(スキーンズと山本は回転が中位、スクーバルはエクステンションが中央値より短い、大谷とペレスはエクステンションが中位)。比べたのは独自にスタットキャストを基に集計した321人で、公式のパーセンタイル集団ではない。新人の途中経過(6月12日まで)。
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ミジオロウスキーがずば抜けているのは、3つのうちのどれか一つではない。速さ・回転・エクステンションが、そろって最上位にある。ここで比べる相手は、先ほどと同じ321人。なお、これから示す順位は独自にスタットキャストを基に集計した321人のなかでの位置であり、Baseball Savant の公式パーセンタイルとは別物である。その321人のなかで、平均球速は約161km/h(100.2マイル)で3位、先発投手のなかでは最速にあたる(救援も含めると3位)。回転数は2,612rpmで3位。エクステンションは2.30メートルで2位、321人の平均1.98メートルより約30cm長い。3つとも3位以内に入っており、速さ・回転・エクステンションの3つすべてが3位以内なのは、321人のなかでこの投手ただ一人である。基準を5位以内に広げても、10位以内まで緩めても、3つとも入るのはやはりこの投手だけである。

3つを同時にそろえることがどれほど難しいかは、図を見ればよく分かる。いま挙げた3つの軸を二つずつ組み合わせた散布図を3面用意し、ミジオロウスキーと名だたる5人を並べた。速度と回転数、速度とエクステンション、回転数とエクステンション。どの面を見ても、図の右上の隅にぽつんと収まっているのはミジオロウスキーだけである。誰もが名前を知る第一線の投手も、3つのうちどれか一つでは必ずミジオロウスキーに届かず、その軸では右上の角から外れる。どの投手がどこで外れるのか、順に見ていこう。

たとえばポール・スキーンズ。球速は高いが、回転数はそれほど多くない。山本由伸は、球速も回転も飛び抜けてはいない。タリク・スクーバルはエクステンションが集団の中央値より短く、大谷翔平も球速と回転は強いがエクステンションは中位にとどまる。回転が最上位で球速も高いエウリー・ペレスでさえ、エクステンションは中位である。いずれも一線級でありながら、3つの要素のどれか一つでは必ず一段見劣りするのである。だからこそ、3面のどの図でも右上に残るのはミジオロウスキー一人だけになる。

約30cm前で離す、その分だけ速く見える

エクステンションは少し説明を足したほうがわかりやすい。ここに、速さをいっそう効かせている仕組みがある。ミジオロウスキーのエクステンションは2.30メートルで、321人の平均1.98メートルより約30cm長い。30cmといえば、ちょうど打者一歩ぶんに近い距離である。それだけ前でボールを離すぶん、実際の球速が同じでも、打者にはより速く感じられる。

この「打者がどれだけ速く感じるか」を表したのが体感速度である。ミジオロウスキーの場合、約161km/h(100.2マイル)の球が、体感では約164.3km/h(102.1マイル)に近い速さに見える。打者がボールに反応できる時間は、約7.1ミリ秒削られる。わずかな差に思えるかもしれないが、160km/h台の球に対しては、この数ミリ秒が見極めの成否を分ける。

約30cm近いところでボールを離し、約161km/hの球を体感で約164km/hに見せ、打者の反応の時間を削る。エクステンションは、こうして速さそのものを増幅している。

カーブも空振りを奪える ― 速いが、回転と変化量は平均以下

空振りを奪っているのはフォーシームだけではなく、カーブもまた空振りを奪える球で、その空振り率は42.9%にのぼる。打者がカーブに振っていったうち、4割を超えるバットが空を切っている計算である。カーブの順位は、フォーシームの321人とは別の集まり、カーブを50球以上投げた169人のなかで見るが、そのなかでこの42.9%は上位約8%にあたる最上位クラスである

なぜこれだけ空振りが取れるのか。そこは、確かなことは言えない。ひとまず手がかりとして、カーブの中身を図で見ておこう。すぐ下に出す図は、カーブの球速・回転数・変化量を、169人のなかでどの位置にあるかで並べたものである。

球速は速いが、回転と変化量は平均以下 ― カーブの中身

カーブを50球以上投げた169人のなかで

ミジオロウスキー169人169人の平均

新人の途中経過(6月12日まで)・独自集計

カーブを50球以上投げた169人のなかでの、ミジオロウスキーのカーブの中身。球速は約140.7km/h(87.4マイル)で最も速い部類(上位2%)だが、回転数2,216rpmは平均2,579rpmを下回り(159位・下位6%)、変化量も約27cmで平均約36cmを下回る(下位約18%)。速さは際立つが、回転と変化量は平均以下である。比べたのは独自にスタットキャストを基に集計した169人で、公式のリーダーボードではない。新人の途中経過(6月12日まで)。
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図からは、球速は最も速い部類(上位2%)だが、回転数も球の動き(変化量)も平均以下であることが分かる。回転数は2,216rpmで169人の平均を大きく下回り、変化量も約27cmで平均の約36cmに届かない。つまり、カーブの強みは回転でも変化量でもない。回転や動きの良さで空振りを奪っているとは言えない。

もう一枚の図には、フォーシームとカーブをどこで離すか、そのリリース位置を示した。

フォーシームとカーブのリリースポイント

フォーシーム(810球)カーブ(136球)

新人の途中経過(6月12日まで)・独自集計

ミジオロウスキーのフォーシーム810球とカーブ136球の、ボールを離す位置(横の位置と高さ)。2つは約7.6cm離れており、カーブのほうが約6cm高い位置から離れる。ぴったり同じ出どころではない。2026年・6月12日まで。独自にスタットキャストを基に集計した。
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2つは近いが、ぴったり同じ出どころではない。離す位置は約7.6cm離れており、カーブのほうが約6cm高いところから離れる。

ここまでを並べると、一つの見立てができる。フォーシームのリリースに近い位置からやや高めに、しかも非常に速いカーブが来る。だからフォーシームと絡んで効いているのかもしれない。ただしこれはあくまで一つの見立てであって、なぜ空振りが取れるのかを言い切るものではない。標本も小さく、その仕組みについて確かなことは言えない。言えるのは、カーブもまた空振りを奪える球であり、その位置づけは脆くない、というところまでである。

それで、ミジオロウスキーとは

ひとことで言えば、フォーシームの速さ・回転・エクステンションという球質の土台が、いまMLBで最も突き抜けている新人である。

2026年のここまでの成績も並べておく(レギュラーシーズン・6月12日まで)。14試合に登板し、すべて先発。防御率1.34、奪三振131、奪三振率39.8%、FIP1.69。奪三振率は対戦打者あたりの三振の割合、FIPは守備の影響を除いて三振・四球・本塁打から防御率を推定した指標で、いずれも低いほど良い。これから先、どんな投手になっていくのか、楽しみに見ていきたい。